2024 学生懸賞論文入賞作品(2編)

2024 学生懸賞論文入賞作品(2編)

応募総数

13編

最優秀賞 1篇

「「負の遺産」PFAS―迫りくる脅威をどう防ぐか―」
法学部法律学科3年 神谷 耀太 要旨はこちら

優秀賞 1篇

「地域活性化?多文化共生?消費者教育と結びついたフェアトレードタウン運動普及の推進」
経済学部国際環境経済学科4年 徳橋 皓太 要旨はこちら

<最優秀賞>
「「負の遺産」PFAS―迫りくる脅威をどう防ぐか―」

法学部法律学科3年 神谷 耀太

 化学物質は、幅広く利用され、人の生活を豊かに、便利にしたが、なかには危険性が指摘され利用が制限されている物質もある。本レポートでは、化学的安定性から「永遠の化学物質」といわれるPFASを取り上げ、諸外国のPFASに係る規制と、わが国のPFASに係る規制とを比較する。その上で、なぜ、わが国がPFASの健康被害の可能性に鑑み、これまで以上に規制を強化してゆくべきかを明らかにする。
 本レポートでは、1章、2章でIARCや食品安全委員会の報告において、触れられた発がん性や出生児低体重化などとの関連性や国内外における汚染の広がりをまとめた。3章では、国内外のPFASに係る規制についてまとめた。人の健康への悪影響や汚染状況等を勘案し、製造?使用等に係る規制については、各国がPOPs条約に沿い措置を講じている。特筆すべきは、EUで検討している全PFASを規制する法案や米国各州が実施しているPFAS含有製品への規制のようなPOPs条約よりも厳しい措置である。水に係る規制は、EUが1万種類あるPFAS全体について500ng/Lという数値が設定され、米国では、PFOS及びPFOAについて、それぞれ4ng/Lという厳しい値が設けられた。この数値には法的拘束力があり、数値超過時には水道事業者等に濃度低減等の義務が課される。わが国は、2020年にPFOS及びPFOA合計で50ng/Lという暫定目標値等が定められた。しかし、法的拘束力はなく、数値を超過したとしても水道事業者に対して義務を課すことができない。4章では、未然防止原則や予防原則と環境政策や司法判断との関係を整理し、生物多様性基本法や化審法において、予防原則が反映されていることが明らかになった。
 これらを踏まえ、わが国は製造?使用等及び水に係る規制は、人の健康への悪影響に鑑み、予防原則的により強化されてゆくべきであると考える。PFASと疾病との関係は確実に証明されているわけではないが、各機関で危険性が指摘されているのも事実である。また、環境中に広く残留している。危険性が完全に証明された時にすでに被害が広がっていれば、その対応コストも甚大になり、水俣病の二の舞になりかねない。そのため、製造?輸入等が禁止されていないPFASについても、製造?輸入等を制限することが求められる。また、水に係る規制については、少なくとも水質基準に引き上げ、水道事業者等にモニタリングや濃度超過時の濃度低減を義務付けるなど法的拘束力を持たせるべきである。

<優秀賞>
「地域活性化?多文化共生?消費者教育と結びついたフェアトレードタウン運動普及の推進」

経済学部国際環境経済学科4年 徳橋 皓太

 日本は少子高齢化やグローバル化に伴い、労働力不足や多文化共生の推進など様々な社会課題に直面している。このような課題を踏まえて、持続可能な社会を築くための効果的な対策が求められている。その一環として、SDGsとの親和性が高いフェアトレードが注目されており、地域全体で取り組む「フェアトレードタウン運動」という制度が存在する。しかし、日本においてはフェアトレードやフェアトレードタウンがまだ消費者にとって身近な存在として認識されておらず、その普及拡大が急務である。この状況を踏まえ、日本でも欧州と同様にフェアトレードが地域に根付いた活動として認識され、様々な場面で活用されるような努力が求められている。渡辺(2018)は、「『誰も置き去りにせず』、すべての人が人間らしく共生できる社会は、フェアトレードタウンが目指してきた社会そのものです。公正で持続的な共生社会を草の根から築き上げるフェアトレードタウン運動は、その実現に向けた力強い一歩となるでしょう」と述べており、フェアトレードタウン運動が公正で持続可能な共生社会を構築する上で重要な役割を果たすことを指摘している。これに基づき、日本でもフェアトレードタウン運動を通じて、地域の力を向上させ、持続可能で多様な社会の実現に貢献できるよう、さらなる発展が必要である。
 本稿では、欧州におけるフェアトレード理念の認識を明らかにし、日本におけるフェアトレードタウン運動の普及を推進するために、地域活性化、多文化共生、消費者教育との関連性を考察した。第2節ではフェアトレードとフェアトレードタウンの概要を述べ、第3節では日本と欧州のフェアトレードの普及状況の比較を行い、欧州での普及が歴史的?文化的要因によって促進されていることを考察した。第4節では、地域活性化や多文化共生、消費者教育といったフェアトレードタウン運動によって期待される効果について述べた。
 フェアトレードタウン運動が公正で持続可能な社会の実現に寄与する一助となることを期待し、効果と結びつけたアプローチを一層推進していく必要がある。今後もフェアトレードに関するイベントや啓発活動に参加し、フェアトレードとフェアトレードタウン運動の重要性を訴え、社会の関心や賛同の輪を広げていくことで、持続可能な地域の発展や社会課題の解決に貢献していきたい。

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